【寝屋川市】香里能楽堂で「引き算の文化に触れる」能楽ワークショップ開催。香里ヌヴェール学院中学校・高等学校の生徒が能楽体験。

2022年7月16日、香里能楽堂で能楽ワークショップが開催され、香里ヌヴェール学院中学校・高等学校の生徒30名が能楽の世界を体験しました。
 
 
この能楽ワークショップは、香里ヌヴェール学院中学校・高等学校が夏期講座として企画、参加希望者を募りました。

香里ヌヴェール学院の田村かすみ先生によると、初回だった昨年は女子16名の参加でしたが、2年目となる今年は中学1年生から高校3年生までの男女30名の参加がありました。

香里能楽堂前に集合し、ワークショップについて説明を受ける香里ヌヴェール学院の生徒たち。

ご覧のように、香里能楽堂は京阪香里園駅を出て京都方面に向かう線路の前に位置し、今般の京阪本線連続立体交差事業による道路拡張工事のため、2021年7月末に線路側客席部分の取り壊しが行われ、現在は客席が大幅に削減されています。

 
冒頭はシテ方宝生流能楽師辰巳満次郎先生より、能楽についての講義がありました。

「序破急」という言葉について

「序破急」とは、「序」最初はゆっくり始まり、「破」そこに拍子が加わり、「急」段々と速さが増して盛り上がっていくことを言います。
「序破急」に当てはめての考え方は能をはじめ芸能全般に通じています。

寝屋川市にも縁のある秦河勝が能を作った

能楽は今から1400年近く前、聖徳太子が側近の秦河勝に作らせたのが始まりだと伝えられています。秦河勝は大陸からいろいろな技術を持って、日本にやってきました。聖徳太子と親しくなった秦河勝は朝鮮半島から持ち込んだ土木技術や政治、芸能などを日本の風土や文化に合わせて改良して伝えました。秦河勝の息子のうちひとりは政治家となり、もうひとりは能や雅楽を作ったとも言われています。記録としては、藤原京の時代から、興福寺や春日大社では薪能が行われていたということです。

【寝屋川市】寝屋川市の歴史を紐解くシリーズ第22弾!川勝町にある秦河勝の墓を訪ねて。聖徳太子の側近秦河勝は、秦の始皇帝の生まれ変わり!?

能は引き算の美学

室町時代は引き算の文化の概念が主流だったそう。
「能・お茶・いけ花・書」は引き算の文化ですね。何故なのか。その頃の日本人は少ないことが美学だったし、現在もその考えは日本人の心に生きています。
演劇の場合だと、緞帳が上がれば、場面のセットがあり、どんな場面か一目でわかりますが、能の場合は、ご覧の通り、舞台の上には何もありません。能舞台は、場所や時間、次元を創造する空間。セットというものが基本的にないんですね。何もないからこそ、観ている人が想像して作り出す。海になったり、山になったり、三歩行けば東京から京都に着きましたということを表したりする。そのために余計なものを作らない。そういう引き算の考え方が能の特徴です。
 
 
この他、ネアンデルタール人もお葬式をしていて、花を捧げるということをしていたという話や氏神様の話などわかりやすく解説してくださり、筆者にとっても大変興味深いお話で、生徒たちも熱心に話を聴いていました。
講義のあといよいよ体験の時間に入り、謡のお稽古へと移りました。
 

「羽衣」の謡の練習

天人が羽衣を着て舞い始める「地次第」の部分です。

「東遊びの駿河舞。東遊びの駿河舞。この時や始めなるらん。」

「羽衣」キリを舞台で

「羽衣」のキリ、天人が舞を舞いながら月へと昇っていく場面の謡の練習のあと、足袋に履き替えていよいよ舞台に上がり、面をつけての体験です。

拍子の練習のあと、実際に能面をつけての体験です。

 
能楽師辰巳孝弥先生も加わって、ひとりひとりが能面をつけて体験します。

翁の面をつけるとおじいさんに。

面をつけて実際に練習した内容を表現します。

生徒たちにとってまたとない貴重な体験となりました。
 
 
最後にシテ方宝生流辰巳満次郎先生、辰巳孝弥先生が「羽衣」の最後の部分を実演してくださいました。
 
 
生徒たちに解説があった部分を演じてくださったので、内容もよく理解できて、熱心に鑑賞していました。
 
 
田村かすみ先生にお訊きしたところ、このワークショップに参加した生徒のきっかけは、和文化に興味があるから、演劇やダンスをしているから、劇団四季のミュージカルが大好きだからと、さまざまな理由があります。
 
 
体験後の感想によると、生徒たちの心に最も響いたのは、能が引き算の文化であることでした。同じ時期に大成された生け花や茶道も同じ哲学を持っています。観る人の想像力に委ね、あえて空間を用意する美学です。
生徒にはこの感性がとても新鮮に映ったようです。
 

講師 シテ方宝生流辰巳満次郎、辰巳孝弥

高校3年生のある生徒は、辰巳満次郎先生のお話に大変感銘を受け、人生が変わった、大学生になってもこの分野の勉強を続けたいというという感想を寄せています。
生徒たちのしなやかで瑞々しい感性を揺さぶる貴重な体験となったようです。

 
香里ヌヴェール学院の田村かすみ先生は、「継続は力なり。満次郎先生のお話が聞きたいハードリピーターが増えてきました。私達の文化的背景を知りたいという青年が、これからも香里の地に増えて行くことでしょう。活動はこれからも長く続けていくつもりです。」と語り、実演、指導に当たってくださった辰巳孝弥先生も「今後も地域の文化・芸術の発展に尽力していきたい」とおっしゃっています。

※画像はすべて許可を得て掲載しております。取材協力ありがとうございました。

 

【寝屋川市】10月2日香里能楽堂で新装お披露目会開催。京阪本線連続立体交差事業による道路拡張工事のため客席が半数に。

 

【寝屋川市】7月14日、テレビ大阪「やさしいニュース」で京阪の立体交差事業によって立退きになる香里能楽堂の最後の姿が放映されます!

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2022/07/18 07:18 2022/07/19 20:19
neyamon

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