【寝屋川市】社会とつながる、明日につながる。太秦緑が丘「まんまうどん」からはじまる循環と挑戦
障がいがあっても、社会とつながる場所をー 太秦緑が丘「まんまうどん」

寝屋川市太秦緑が丘にある「まんまうどん」は、株式会社マザーズが運営する飲食店です。同社が展開する「生活介護そらな」「就労継続支援B型まんま」を利用する人たちが、ここで社会とつながりを持ちながら働いています。
「まんまうどん」の歴史

マザーズ代表の山内さんは、障がい者支援施設で移動支援に携わった経験をきっかけに、「1対1の支援を超えて、仲間と集団で過ごせる場をつくりたい」「問題行動の理由をもっと理解したい」と考えるようになりました。
こうした思いから「放課後等デイサービス ひなた」を展開するため株式会社マザーズを設立。2012年、児童福祉法に基づく福祉サービスとして放課後等デイサービスが始まったばかりの時期です。

しかしながら、放課後等デイサービスを利用できるのは、6〜18歳までの子どもたちに限定されています。そんな子どもたちが、放課後等デイサービスひなたを卒業したあとに社会に踏み出す一歩を学ぶ場として、「生活介護そらな」を立ち上げます。
そらなではお米や野菜づくりにはげみ、自分たちの昼食を用意したり、手づくりのお弁当を地域へ届けたりしてきました。

ただ、社会との関わりはどうしても限られてしまう中、「もっと地域の人と接する機会を広げたい」という模索は続きます。
そんな時期を経て、2023年、ついにまんまうどんの前身となる「まんまカフェ」をオープン。
手づくりの料理を、カフェスタイルでお客さんに届けるー。 同時に「就労継続支援B型まんま」も立ち上げ、お米づくりや野菜づくりで培った経験を、地域へと還元する循環が生まれました。

そして2025年6月には、よりシンプルで取り組みやすい「うどん」を中心としたメニューへと舵を切り、店名も新たに「まんまうどん」としてリニューアルオープンしています。
職員のサポートを受けながら

まんまうどんでは、看板メニューのうどんをはじめ、まんまカフェ時代に好評だった日替わり定食も提供。さらに同敷地内で「まんまドーナツ」の店舗も運営しています。

日替わり定食のテイクアウトとまんまドーナツ
スタッフとして働く「生活介護そらな」「就労継続支援B型まんま」の利用者を職員らがサポートし、互いに協力し合って営業しています。

スタッフMさんはおもに接客を担当。次々とやってくるお客さんを出迎え、注文された料理を運びます。テーブルのお水やお茶が少なくなっていれば声をかけることも忘れません。
「小さなことに気がつき、細やかな気配りができるのが彼女のすごいところ」と山内さん。開店前の準備も、一人でこなします。

いっぽう、メニューの紹介をしたり注文を受けたりすることには、まだ課題があります。発音に不明瞭さがあるため粕汁定食の「粕汁」という単語がなかなか言えず苦戦したというエピソードも。自宅での練習を繰り返し、苦手をひとつひとつ克服していっている最中です。

Mさんを悩ませた粕汁定食
それでもお客さんとの会話は好きで、赤ちゃん連れのお客さんに「かわいいですね、何ヶ月ですか。」と話しかける場面も。今後は「練習して、もっとすらすらメニュー名を言えるようになりたい」「調理の仕事もたくさんやってみたい」という目標を抱いています。
贅沢メニューから定番うどんまで

まんまうどんでは、かけうどん、きつねうどんなど定番のうどんに加え、新しいメニューの開発にも積極的。
スタッフHさんのおすすめはこの秋登場したばかりのメニューだそうです。

それがこちら、「黒毛和牛肉うどん」。

黒毛和牛の買い出しにも、職員・利用者で出かけるそう。
甘辛く味付けされた黒毛和牛はとても柔らかく、ほんのり生姜の香りが漂っています。

化学調味料や保存料などの添加物を含まない、やさしい味の出汁は、これだけでゴクゴク飲めるほど。

暑い季節は、冷たいうどんも人気です。

シンプルにいただくのもいいですが、好きな具材を選んでトッピングすることも可能。店内で味付け調理しているきつねなど、具材のひとつひとつに工夫が詰まっています。週に1回削り節職人に頼んで削ってもらっているというこだわりの鰹節も、忘れずに味わっておきたいところ。
お客さんの「おいしい」がうれしい

食材の買い出しから調理までオールマイティにこなすHさん。働いた日は、夜遅くまで起きていられないほど疲れてしまうこともあると話します。でも「お客さんの「おいしい」という言葉が一番うれしい!」と満面の笑み。
大のデバイス好きのHさんにとっては、日々頑張って得た対価で最新機器を購入するのもモチベーションになっています。「12月にも買いたいものがある」と目を輝かせるHさん。ゆくゆくはまんまうどんのYouTubeチャンネルを開設し、お店の裏側を届けたいという夢も抱いているそうです。

大変なこともありますが、お客さんの反応や笑顔に触れられる活動は、心温まるかけがえのない時間になっています。
食を通じて地域に還元し、支援を受ける側から人々の食を支える側へ。今日の頑張りから、明日の目標へ。そんな循環を生み出す実践の場が、まんまうどんです。
「まんまうどん」の場所はこちら↓






